マルタと言っても世界遺産の地中海の島ではなく、ローマの北100キロ弱、ボルセーナ湖・湖畔の街。丘の上に中世からの住まいがひしめいて、ここはその最上部でロマネスク様式の塔の傍。実をいうと私は海外旅行で命の次に大切なもの複数を置き忘れてきたため、悶々と心配しながらこの絵を描きました。結局は事なきを得ましたが、夕食のときこの話を打ち明けたら、ある女性が「私の武勇談」として「何年か前　パリのレストランで食事をした時後ろに背広姿の男二人が立って居たの。そのうちふと気づくと足元のバッグが口を開け中身がない！　男二人が去ってゆくのを見たので追っかけて行って二人の襟元を掴み“あんたたちでしょう！ポケットの中を見せなさい”と言ってパスポートと財布を取り戻したの。そのあと数分間は心臓がバクバクしていたわ」。大変な胆力・腕力ですが、もと商社に勤められていたそうで語学も相当堪能だったのでしょう。